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国宝臼杵石仏公式ブログ

記事アーカイブ:

保存作業現場公開と側面から見る石仏

枯死させた着生生物の除去

枯死させた着生生物の除去

 約900年もの間、この地の岩肌に形を留め続けている臼杵石仏。

この貴重な文化財を守り後世に伝えていくため、保存やメンテナンスが欠かせません。その重要性を多くの方にお伝えしていくため、毎年、保存作業の現場を公開しております。

 2/6(土)、古園石仏での作業現場が公開されました。

内容は「中間除去作業」といい、石仏表面に1週間紫外線を当て枯死させた着生生物を手作業で除去するという行程です。
作業は、黒く焼けた部分を丁寧に刷毛や串を使って、ミリ単位で除去していきます。

表面の除去が終わると、また1週間紫外線を照射し、深部の着生生物を枯死させ除去します。その後、再着生を遅らせるための撥水剤を散布し、本年度の作業が終了となります。

 柵の中に入り近くから作業を見ると、石仏と岩との接着面が分かり、岩肌から仏像が突き出ているようにも見えます。正面から見ると岩の前に置かれているようにも見える石仏が「岩に彫られた仏」であることが、実感できました。

柵の中から見える仏像側面

柵の中から見える仏像側面

 再び、離れて眺めると削り取られた面積の広さに目が行きます。大型機械のなかった時代、どれだけのマンパワーと歳月を要したことでしょう?

遡ること約900年、臼杵の地でこのような壮大な事業が遂行されたことに、感慨を抱かされます。

 時代が流れ、世代が交代しても、変わらぬ姿でここに在り続けてほしい「岩に彫られた・岩に咲く仏様たち」。

保存に関わるみなさまに、今回も深く感謝いたします。
ありがとうございました。

苔のお話。

苔

ここ数年、苔が流行っているのをご存知ですか?

苔は「わびさび」という日本人特有の美意識と結び付けられることも多く、苔と共にきれいに手入れされた庭や、苔でむした寺院などを観ると心が和んだりする人も多いと思います。

最近では小さな瓶に入れて、インテリアとして楽しんだり、コロナ真っ只中のストレス社会で、鮮やかな緑に癒しを求める人も多いのだとか。

お手入れがラクというのも魅力の一つのようです。

臼杵石仏にもたくさんの苔が生えています。

雨の日は参道や階段が苔で滑りやすくなったり、仏像本体に生えている苔やシダなどは、仏像を痛めてしまうので、定期的に除去する作業が行われています。

臼杵石仏での「苔」は少なからず、私たちを悩ます問題でもあるのですが。笑

いつか来られたアメリカのお客様に紫外線照射について尋ねられた時に、ひどく悲しまれたことがあります。
「苔が生えているとうことは、雨の日も風の日も長い時間ここに変わらずずっとあったという証拠なのに、なぜそれを除去してしまうのですか?」と。

その方が住んでいるアメリカの街は、一年を通して湿度が低く、苔を見ることはほとんどないそうで、参道にあるたくさんの厚くなった苔を見て感動していました。

仏像が彫られている岩が脆く弱い事、日本の大切な宝として未来に残していく作業の一環だということ…などを説明すると納得して頂けました。

ひとくくりに苔としても、人々の癒しになったり嫌がられたり…

着目点を変えるといろいろな意見や考えがありますね^^

苔

苔

苔

苔

苔

苔

苔

苔

写真は全て臼杵石仏で撮影したものです。

よく見ると一つ一つ種類が違うのがよく分かり、愛着も出てきます。笑

特別祈願法要が行われました

祈願法要

祈願法要

本日、2021年最初の特別祈願法要が関係者のみで行われました。

通常、参列された方には、頭の上で大般若経の経典本の風受け、僧侶の方に両肩をポンポンっと叩いて頂くのですが、今日は来賓・参列者はいなかったので、投函頂いたお願い事の祈願のみを行いました。

前回の祈願法要(9月)から昨日までに投函された祈願用紙は約3500枚でした。

このコロナ禍で3500枚という枚数が多いのか少ないのかは微妙なところですが、昨年10月からgotoキャンペーンが始まり、秋頃は、県内小中学校の修学旅行先として選んでいただいたこともあり、学生さんで賑わっていました。

年が明け、各都道府県で非常事態宣言が出されているところもあるので、ここ数週間、お客様は非常に少ないです。

以前のような活気のある臼杵石仏へ早く戻るといいなぁと思います。

 

 

雨の日の観音菩薩像巡り

ホキ石仏第1群第1龕の観音菩薩像

ホキ石仏第1群第1龕の観音菩薩像

冷たい雨の石仏。
ホキ石仏第2群の観音菩薩のお顔が一色濃く感じられます。

 観音菩薩は、阿弥陀如来の慈悲の心を表すとされる仏様。
観世音菩薩とも言い、字のごとく、世の中の人々の苦しみや悩みの声(音)を聴き(観る)、見守ってくれる、という優しい仏様です。

 臼杵石仏には、数体の観音菩薩像がございます。

 まず、ご紹介するのは、代表的な観音菩薩立像である、ホキ石仏第2群第1龕、向かって右の仏様。形をきれいに留め、お顔の表情や手にする蓮の花からも、慈しみの仏様の風情が感じられます。

次は、ホキ石仏第1群第1龕の向かって右の立像。

ホキ石仏第1群第1龕の観音菩薩像

ホキ石仏第1群第1龕の観音菩薩像

隣の愛染明王に視線が行き、見逃してしまうことも多いのではないでしょうか?
お顔の下の部分は欠けていますが、宝冠と優しい目元をじっと見ていると、「観音菩薩ここに在り」と、視界の中で目立ってくるようです。

 続いてホキ石仏第1群第3龕の向かって右。

ホキ石仏第1群第3龕の観音菩薩像

ホキ石仏第1群第3龕の観音菩薩像

こちらは、上半身の右半分が大きく欠けています。ただ、袈裟の赤い色をよく留めており、本来は美しい装飾をまとった姿であったことが想像できます。色と言えば、隣の第4龕「地蔵十王像」の鮮やかさが有名ですが、この観音菩薩像の赤も負けてはいません。

 最後に、古園石仏群の観音菩薩像。向かって右から3番目。

古園石仏の観音菩薩像

古園石仏の観音菩薩像

よく似た背格好の菩薩・如来像が並んでいますが、隣の普賢菩薩と比べてみると、目の表情が異なる印象を受けます。寄り目の普賢菩薩に対して、静かに視線を落としているように見えます。優しく世の声を聞いているこの姿は、やはり観音菩薩像らしく見えます。

 続く雨音、観音菩薩様も聞いているのでしょうか?こんな石仏巡りも味わい深いものです。

造営当時の色

あいにくの雨ですが、久々の雨は恵みの雨でもありますね。

条件がそろわないと見られない濃く鮮やかな造営当時の色、今日も見ることができました。

地蔵十王像

阿蘇凝灰岩でできた磨崖仏表面は、他の岩よりも乾きやすく、特に冬場は乾燥している為、普段はかなり白っぽく見えます。

この濃い赤や黄色は雨が降れば必ず見られるというわけでもなく、気温や湿度など、様々な偶然が重なり浮き出てくる、造営当時の色彩です。

普段は晴れた日の石仏を見る方が多いかと思います。

臼杵市は二王座歴史の道の石畳など、雨が似合う町でもあります。

雨の日の石仏、是非お越しくださいね!

 

愛染明王

愛染明王もきれいにくっきり浮き出ていましたよ!

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