60年ぶりの石仏一人旅
先日、年配の男性が一人で臼杵石仏にいらっしゃいました。
入り口で「60年ぶりに来たから楽しみにしています」と言われ、少し世間話をしました。
〇〇年ぶり、とお話してくださる方は多く、「修学旅行で来たよ!」「新婚旅行で来た!」「教科書に載ってたよね?」などとよく言っていただきます。
いろいろなお話がある中で、「60年ぶり」という方も実はそんなに珍しくはありません。
ただその方は、前回来たのが22歳の時で、石仏をまた見たいとずっと思っていたけれど、なかなか機会がなく、今回になった、と。
歳もとって危ないからと家族に運転免許の返納をと言われていて、福岡から最後の一人旅の目的地として、ここ臼杵石仏を選んだ、とのことでした。
「まだその頃は参道もなくて、竹藪の中の狭い道を上がっていったんよ」
臼杵市民にとって身近な石仏を最後の一人旅の目的地として選んでいただけたことはとても光栄です。
しかしながら、このおじいちゃんはこの旅行を終えたら、もう1人で運転して旅をすることはないんだなぁと思うと、最後の目的地に選んでいただいた嬉しい気持ちと、なんとも言えない切ない気持ちが入り混じって、なんだか複雑でした。
お客様の中には様々な思いや事情と共に来られる方がいらっしゃいます。
臼杵石仏は約900年の間、同じ場所で風雪に耐え、多くの人に大切にされ、愛されながら、人々の思いや願いを聴いてくれています。
紅葉シーズンです。お散歩がてら是非臼杵石仏へお越しくださいね^^
写真はいつかの石仏からの風景です。
虹が出ていました^^
仏も紅葉
11月らしい曇り空が広がる中、参道は木々に明るく照らし出されております
朝晩の冷え込みで、日ごとに深まる紅葉。
数日前の暖かな雨で、鮮やかに発色した石仏。
臼杵石仏の数カ所では、湿度と気温が急に上がると色が濃く浮かび上がります。紅葉とは逆の条件のようですね。
しかし、しっとりと黒く染まる仏体に朱や山吹色が鮮やかに発色する様子は、正に「仏の紅葉」。独特の美しさが漂い、何だか魅了されてしまいます。
色を見るなら、ホキ石仏第1群がおすすめです。
通常でもカラフルな地蔵十王像がやはり目立ちますが、お隣の小さな大日如来様(美仏内閣の総理大臣)がいる第3龕も煌々と光を放っているようでした。
また、一番のイケメンと称される第2龕の阿弥陀如来様(官房長官です)も凛々しさを増しているようでした。
年に数回、不定期に訪れる「仏の紅葉」晩秋編でした。
台座時代の大日如来様は伏し目ですら気持ちが通じ易かった?
長年の間、「石仏の顔」として親しまれてきた落下した大日如来像の頭。
台座に安置されていた姿が印象的で、石仏を訪れた多くの人々の記憶に今なおとどまっているようです。
昔は覆い屋も簡易であったため、もっと近くに感じられた、という声も多く聞かれます。
当時の写真を眺めていると、確かに人との距離は近かったのだろう、と思います。
一方で、視線を合わせることは難しかったのでは?という思いが湧いてきます。
現在では、少し腰をかがめて下から眺めることで、大日如来様と視線を合わせることができます。正面に立っただけでは目はなかなか合いません。それだけに、下からお顔を見ると何とも心が近付いたような気持ちになるものです。
しかし、頭が落下していた時代にはまた別の「身近さ」が漂っていたのでしょうね。
さわやかな秋晴れですね^^
ここ数日さわやかな秋晴れが広がって、ピクニックが気持ちい季節になりましたね。
全国旅行支援のおかげもあってか、遠方からの観光バスも増えて、毎日にぎわっている臼杵石仏です。
日曜日の今日は、子ども連れ、ワンちゃん連れで石仏公園にシートを敷いてゆっくりされているご家族が数組いらっしゃいました。
太陽の下で、のんびり家族で過ごすのもいいですね!
見ているこちらもほっこりします^^
のんびりピクニックにお散歩に、ぜひ臼杵石仏へお越しくださいね!
「修復前」という時代に想いを馳せ
先日、大分市内の方から「お役に立てたら」と、古い写真をいただきました。
丁寧に写真を張り付けたスクラップブック。毛筆で書かれた表紙や見出しに、作成された方の熱い想いが感じられます。
写真は修復前のもので、山王山や簡易の柵で囲まれた古園石仏など珍しいものもありました。
石仏の修復の山場は古園石仏群にあるとされますね。頭を繋げる作業は度々話題にのぼります。
しかし、この写真集を眺めていると、他の群でも見た目をガラッと変える修復がされたことが分かります。
例えば山王山石仏の向かって右:伝薬師如来坐像です。
写真では(向かって)右半身が鋭く斜めに抜け落ちています。
今では両腕が揃っているので、落ちた岩はほぼ集められたのでしょうね。指以外は。
片腕のない仏像というのも迫力があるものです。
今よりパーツの少ない石仏が並んでいた当時、印象も随分異なるものだったようで、「以前とは別の所へ来たようだ」という感想も聞かれます。
どちらがいいとも言えませんが、修復前・後という二つの時代の石仏を巡った、ということに価値があるように思えます。
当時の写真を眺めることで、疑似体験にも近い感覚が得られそうです。貴重な資料をありがとうございました。