一石型?積み石型?五輪塔
臼杵石仏の中にはたくさんの五輪塔が見られます。
有名なのは、ホキ石仏第1群の上、中尾地区の台にある「一石五輪塔」。国指定の重要文化財です。
嘉応2年(1170年)、承安2年(1172年)と刻銘のある五輪塔としては、日本で2番目と3番目に古いという価値ある塔です。
因みに一番古いのは、岩手県中尊寺にある五輪塔で仁安4年(1169年)。大差ないところが、惜しいというか改めてすごいな、と関心させられます。
五輪塔は5つ構成部分からなり、下から「地・水・火・風・空」を表しています。密教でいう宇宙を構成する5大要素です。この塔で供養することで、故人が宇宙に還元され、極楽往生できると考えられているわけです。
また、造り方には2つのタイプがあります。一つの石を削った一石型と複数の石を積んで造ったもの。
「一石型」は全体的に筒形で丸みを帯びているのが特徴です。中尾の五輪塔も正にその典型ですね。
対する「積み石型」は、下の部分(地輪)が最も広く、上の石になるほど小さくなります。また、四角・三角・球・半月などの形もはっきりしています。
面白いのは、5つの石ではなく、上の2つ(風輪・空輪)は一つの石になったものがほとんどというところです。4石造り?
五輪塔の歴史は、平安後期に始まります。当初は権力者や寺院などの造立にかかる供養塔としての意味を持つものでした。
時代が下がり、室町時代になると、一般庶民の供養塔としても用いられるようになります。サイズもコンパクトに造り方も簡素化されたのもそのせいでしょう。
ホキ石仏第2群の前に点在する小さな五輪塔は積み石型です。
4石造りも多くみられます。
ところが、右端には一石五輪塔が並ぶエリアがあるのです。
小さくて簡素な造りですが、一石型。しかし権力者や記念塔には見えません。気のおけないかわいらしい塔。
流行り廃りはあっても、造らせた人の個人的趣向もあったことでしょう。また、案外古いものなのかもしれません。大掛かりではなくとも、五輪塔に故人の極楽往生を託した庶民がいた、というのもいい話ですね。
みなさま、どちらがお好みですか?五輪塔を眺めながら、冬の参道を歩いてみませんか?