「修復前」という時代に想いを馳せ
先日、大分市内の方から「お役に立てたら」と、古い写真をいただきました。
丁寧に写真を張り付けたスクラップブック。毛筆で書かれた表紙や見出しに、作成された方の熱い想いが感じられます。
写真は修復前のもので、山王山や簡易の柵で囲まれた古園石仏など珍しいものもありました。
石仏の修復の山場は古園石仏群にあるとされますね。頭を繋げる作業は度々話題にのぼります。
しかし、この写真集を眺めていると、他の群でも見た目をガラッと変える修復がされたことが分かります。
例えば山王山石仏の向かって右:伝薬師如来坐像です。
写真では(向かって)右半身が鋭く斜めに抜け落ちています。
今では両腕が揃っているので、落ちた岩はほぼ集められたのでしょうね。指以外は。
片腕のない仏像というのも迫力があるものです。
今よりパーツの少ない石仏が並んでいた当時、印象も随分異なるものだったようで、「以前とは別の所へ来たようだ」という感想も聞かれます。
どちらがいいとも言えませんが、修復前・後という二つの時代の石仏を巡った、ということに価値があるように思えます。
当時の写真を眺めることで、疑似体験にも近い感覚が得られそうです。貴重な資料をありがとうございました。